奄美保全研究会 19年秋調査報告 リュウキュウアユ

2020年02月03日

奄美大島に生息するリュウキュウアユ

奄美大島に生息するリュウキュウアユ

 奄美リュウキュウアユ保全研究会(会長・四宮明彦元鹿児島大学教授)は2日、奄美市住用総合支所で学術検討会を開いた。奄美大島だけに天然の個体が残るリュウキュウアユの調査報告があり、2019年秋の個体確認数は1万6034匹と前年(2万962匹)を4928匹下回った。同研究会は冬の海水温が高くなると春に海から川に上る稚魚が減り、個体数が減少するとして「温暖化はアユにとって大きな脅威になる」と警鐘を鳴らした。

 

 アユの調査は毎年、稚魚が海から川へ上る春と、繁殖期を迎えた成魚が産卵のため川の下流に集まる秋に、鹿児島大学と琉球大学などが合同で実施している。昨秋は11月上旬の3日間、島内16河川で潜水調査を行った。

 

 主要な4河川別の確認数は、最も多い役勝川が前年の9520匹から1万4509匹に増加したが、▽住用川591匹(前年2742匹)▽川内川386匹(同5884匹)▽河内川315匹(同676匹)│と他の3河川で大きく減少した。

 

 昨年春の遡上(そじょう)期の調査では個体数が激減し、特に東シナ海側の河内川で存続が懸念されていたが、同研究会の久米元・鹿児島大学准教授は、産卵が見込める個体数が確認できたとして「海水温が高く、遡上が遅れたのでは」と述べた。

 

 個体数の増減と海水温の変化の影響について、久米准教授と井口恵一朗・長崎大学大学院教授が報告。海水温が高いと、稚魚が水中で塩分を調節するために必要なエネルギーが多くなるため、生き残って遡上する個体が減ると考察。温暖化の影響を回避するには「(稚魚への負荷が少ない)汽水域の発達が大事だ」と指摘した。

 

 島内で増加している水鳥カワウによる捕食被害の防止へ、同研究会は昨年11月、川の水面にテープを張ってアユの産卵場を保護する取り組みを初めて実施。関係者が連携したカワウ対策の体制づくりを呼び掛けた。

 

 四宮会長は「温暖化が続くとアユにとっては非常に厳しく、個体数の存続は予断を許さない状況だ。見守って大事にしてほしい」と述べた。