奄美大島いきものがたり

2024年03月08日

○身近な野鳥の筆頭イソヒヨドリ

イソヒヨドリのメス

本土で身近な鳥といえば、スズメやドバトなどが思い浮かぶ。しかし、奄美大島ではそれほど見かける機会は多くなく、身近な鳥の筆頭といえばイソヒヨドリだろう。もともとは海岸の岩場や磯に生息する鳥であったことから「磯」が含まれているのだが、現在は人家の屋根や電線でさえずっていたり、駐車場に止めていた車の下から現れたりすることもあるほど。

オスとメスでは容姿が異なる。オスは赤と青のツートンカラーでメスは全身、灰褐色。オスをルリカケスと見間違う人もいる。一言で違いを挙げると、ルリカケスの嘴は白く、イソヒヨドリは白くない。

イソヒヨドリはこれから繁殖期に入る。人の近くで営巣することも多い。建物内や室外機の裏側、戸袋の中などちょっとした隙間を見つけて、ヒナを育てる。私たちの生活圏であっても、イソヒヨドリにとっては子育ての場。人が近くを通れば、威嚇もするし、飛びかかってくるような勢いで迫ってくることもあるのでご注意を。

 

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○割と近くで見られる希少種ホザキザクラ

ホザキザクラの花

「希少種」「固有種」などと言われると、何となく森の奥深くや私たちの生活圏からかけ離れた場所で見られそうなイメージがある。私も高校生の頃まではそう感じていた。もちろん、何時間も歩いてようやく生育場所にたどり着ける植物もあるが、林道脇やその辺の草地にも希少種は生えている。

山口県、屋久島、奄美大島、沖縄島に分布するサクラソウ科のホザキザクラもその一種である。環境省レッドリスト2020では、絶滅危惧ⅠB類(EN)に選定されている。草丈の低い、日当たりのよい草地に生育し、3月頃から1㌢にも満たない小さな白い花を咲かせる。開花のタイミングは株ごとに異なり、夏頃まで開花しているものもある。

いくつかの文献に目を通してみると、奄美大島は「比較的観察しやすい」と書かれている。しかし、沖縄島では非常に珍しいようで、めったに見られないようだ。花が小さいことから、目が慣れてこなければなかなか見つけられないが、最近は生育環境の特徴がわかってきたため、島内のいくつかの場所で連続して見つけることができた。

 

(平城達哉・奄美博物館学芸員)