奄美大島いきものがたり

2024年04月05日

◎生態系のエンジニア オーストンオオアカゲラ

巣穴を掘るオーストンオオアカゲラのメス

新緑の森が広がる頃、奄美大島に生息する留鳥の多くが繁殖期を迎える。ルリカケス、オオトラツグミ、アカヒゲなど、多くの人が知っている鳥たちがそうである。

オーストンオオアカゲラは春先から巣穴を掘り始める。高速で連続的につつくドラミングではなく、コンコンと掘り進め、巣の中から木くずを出していき、やがて完成する。そこで産まれたヒナは親鳥からエサをもらい、すくすくと成長する。

巣立ちが近づくと、親鳥は簡単にエサを与えないようになり、エサをヒナに見せながら巣穴の裏に移動したり、くわえたまま離さなかったりして、巣立ちを促すようになる。巣立ち直後の少しの間は、親鳥と行動を共にする。

オーストンオオアカゲラのように自ら繁殖する際に樹洞(じゅどう)(木に形成される空洞、穴)を掘ることができる種のことを一次樹洞営巣種という。オーストンオオアカゲラが作った巣は、ケナガネズミやリュウキュウアカショウビン、リュウキュウコノハズクなどが営巣場所として再利用する。自ら樹洞を掘ることができない種にとって、重要な資源である。新たな生息地を作る役割であることから、キツツキの仲間は生態系エンジニアとも呼ばれる。

オーストンオオアカゲラは、奄美大島の生態系にとって非常に重要な役割を果たしている生き物でもある。

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◎ひっそり開花する希少種 レンギョウエビネ

レンギョウエビネの花

春は奄美大島を代表する固有植物も多く開花する時期。アマミセイシカ、アマミエビネ、アマミカヤランなどがその代表格であろう。黄色くて下向きに可憐な花を咲かせているレンギョウエビネも、森林内でひっそりと開花を迎えている。存在はさほど知られているわけではないが、環境省レッドリスト2020では絶滅危惧Ⅱ類(VU)、鹿児島県希少野生動植物種にも選定されている希少種だ。

レンギョウエビネは、別名スズフリエビネともいわれ、国内では屋久島以南のいくつかの島に分布している。高さは80㌢ほどにも及ぶ大型のランの仲間である。森林内の林床から生えるが、苔(こけ)むした倒木の上に生えていることもあり、驚かされることもある。花は30個ほどついていて、下の方から順番に咲き始める。開花している花の数はそんなに多くないので、撮影するタイミングがとても難しい。
(奄美博物館)