若手研究者4人が発表 奄美市で渚のいきもの勉強会 鹿大・島嶼研主催

2024年02月25日

若手研究者がそれぞれの活動や最新の知見を紹介した「渚のいきもの勉強会」=24日、奄美市名瀬

奄美群島の水辺の生き物について学ぶ「第2回 渚(なぎさ)のいきもの勉強会」(鹿児島大学国際島嶼(とうしょ)教育研究センター主催)が24日、奄美市名瀬の奄美海洋展示館であった。奄美大島で活動する若手研究者4人がそれぞれの研究内容を報告。身近な生き物の知られざる生態を紹介し、研究職の楽しさなどを伝えた。

 

勉強会は研究の成果と最新の知見を地域に還元するとともに、研究者同士や地元住民らとの情報共有の場をつくろうと昨年秋に初開催。会場は出入り自由で、子どもから大人まで自然に関心の高い約30人が参加した。

 

鹿大島嶼研の牧貴大特任研究員(29)は河川沿いで録音した音声データを基に、奄美にいるコウモリの種類と生態を紹介。▽確認されている8種のうち4種が絶滅危惧種▽超音波を発し反射する音で周囲を把握している▽場所や目的によって音声を使い分けている▽森林が近い場所や洞窟などに多く、生息地の開発や観光利用で数が減る可能性がある―などと語った。

 

奄美市立奄美博物館の川上晃生学芸員(32)は、縄文時代の奄美大島の遺跡からも出土する一枚貝の「オオツタノハ」について、①潮流が速く波当たりが強い岩場にいる②古代人は食用のほか腕輪などに利用していた③トカラ列島などから貝を入手していたと推測されていたが、奄美近海で採取していたと思われる―などの研究成果を報告した。

 

奄美海洋展示館の打和宏介学芸員(25)は専門のハゼ類の研究と展示を通して、生き物について知る楽しさや展示館の楽しみ方を解説。「多くの人に生き物への関心を高めてもらうとともに、飼育下での繁殖と長期的な育成方法の確立、研究機関、行政、自治体、漁師らと連携した調査に協力していきたい」と思いを語った。

 

東京大学大気海洋研究所に所属する同大大学院生の前田達彦さん(25)は、奄美大島の河川にいるオオウナギの生態を調査。研究の一環で捕獲して別の場所に放流すると元の場所に戻る個体が多く、特に大型個体でその傾向が強かったことから、「オオウナギは生息地を認識しており、生存率を高めるために元の場所に回帰するのでは」と述べた。

 

聴講した宇検村立名柄小学校6年生の廣瀬郁羽君(12)は「魚や珍しい生き物が好きで、将来は研究者になりたい。オオウナギの話を聞いて実物を見に行きたいと思った」と話していた。