21年度 ノネコ捕獲124匹 不妊手術済みが4割 人里からの流入顕著に 奄美大島

2022年04月18日

山中の自動撮影カメラが捉えたクロウサギをくわえて運ぶ猫=2021年7月、奄美大島(環境省提供)

環境省が奄美大島の山中で進める野生化した猫(ノネコ)の2021年度の捕獲状況がまとまった。捕獲数は124匹と、作業エリアを拡大したことで前年度(27匹)の約4・6倍に増えた。捕獲した猫のうち、元は集落などにいたとみられる不妊手術済みの個体が約4割を占め、人里からの流入が顕著になった。環境省は、ノネコの元になる野良猫や飼い猫の地元自治体による管理対策と「連携した動きが不可欠」としている。

ノネコの捕獲は、アマミノクロウサギなど希少動物が襲われる被害を防ぎ、生態系を保全する目的で、環境省と県、島内5市町村が策定したノネコ管理計画に基づいて18年7月に始まった。初年度の捕獲数は43匹。作業エリアを拡大し、捕獲用のわなを増設した19年度は125匹と増えたが、20年度は27匹まで減っていた。

21年度は作業エリアを約3・8倍の約385平方㌔と、島全体のおよそ半分の面積に拡大。わな430基を設置し、作業員8人体制で捕獲を進めた。作業開始以降の捕獲総数は319匹。捕獲された猫は収容後に譲渡され、殺処分は行っていない。

捕獲エリア内に設置した自動撮影カメラには、アマミノクロウサギなどの希少動物をくわえた猫が複数記録され、同省は「同定が困難な写真も少なくないため、氷山の一角と思われる」としている。親子とみられる猫が写った画像もあり、山中で繁殖しているノネコがいるとみられている。

島内5市町村は、集落などにいる野良猫の繁殖制限を目的に、不妊手術を行うTNR事業を進めている。環境省によると、21年度に捕獲されたノネコのうち、手術済みの印に耳先をカットされた個体が48匹含まれていた。

TNR事業で不妊手術をした猫と、山中で捕獲したノネコの特徴を照合した結果、島内の集落にいた野良猫が、10㌔以上離れた希少種が多い湯湾岳(大和村、宇検村)でノネコとして捕獲されるなど、長距離を移動して山に侵入する個体もいることが分かった。

同省奄美群島国立公園管理事務所の阿部愼太郎所長は「ノネコの捕獲と、飼い猫の適正飼養、野良猫のTNRは車の両輪。どちらも効果的に機能するようにしていくことが不可欠」と述べ、関係機関と連携した対策の強化を強調した。