「あらゆる生活の記憶を記録」 長田須磨「奄美方言分類辞典」読み解く 大和村

2023年11月05日

芸能・文化

長田須磨が刊行した「奄美方言分類辞典」の内容を紹介し、現代的意義を説明した狩俣繁久さん=4日、大和村

大和村出身の女性民俗学者・長田須磨の功績から奄美の文化などについて考える「第2回長田須磨シンポジウム」(奄美文化継承プロジェクト主催)が4日、同村思勝の村防災センターであった。琉球大学名誉教授で戦略的研究プロジェクトセンター産学官連携研究員の狩俣繁久さん(69)が方言の継承へ向け「奄美方言分類辞典の現代的意義」と題して講演したほか、同村児童による島口継承の取り組みが披露された。

 

長田須磨(1902~1998年)は48歳で柳田國男主宰の女性民俗研究会に参加し、研究の道へ。奄美の言葉や女性などに関する書籍を刊行し、奄美の民俗継承に尽くした。シンポジウムはおいの見目(けんもく)正克さん(奈良女子大学名誉教授)が各方面に呼び掛けて実現した。

 

狩俣さんは、2009年にユネスコによって消滅の危機に瀕(ひん)している言語に奄美語が認定されたことに触れ、「シマクトゥバ」がなくなると「言語によって継承され、理解されてきた文化が形骸化し、途絶えてしまう」と警鐘を鳴らし「言葉と共に文化があり、人は言葉に支配されて行動している」とした。

 

長田が古里の大和村大和浜の言葉や風習をまとめた「奄美方言分類辞典」(上下巻)の特徴については、意味ごとに分かれた配列がなされており、意味記述が豊かで、シマの暮らしが見えるなどと説明。「あらゆる生活の記憶が記録してあり、社会の近代化にともなって暮らしや労働のあり方が大きく変容した現代には貴重」と位置付けた。

 

島口教訓カレンダーの中から好きな言葉と理由を読み上げた大棚小学校1年生の3人=4日、大和村

同辞典の内容を紹介した上で、これからの辞典に必要なポイントは、文字と音声がセットであることなどと話した。今年度中に、インターネットで検索できるデジタル辞典「大琉球語辞典」を公開する予定という。

 

講演後は、同村の大棚小学校の1年生3人が島口教訓カレンダーの中から好きな言葉と理由を読み上げ、名音小学校の児童12人が八月踊り「ミッシャ」と「カドコ」を披露。来場者を楽しませた。