泉芳朗書簡を町文化財指定 日本復帰の裏側知る貴重な資料 伊仙町
2022年12月01日
芸能・文化
伊仙町教育委員会は11月18日付で、同町出身で奄美群島の日本復帰に尽力した泉芳朗の直筆の手紙「盛郷重廣宛泉芳朗書簡」を町の有形文化財に指定した。手紙は1953(昭和28)年3月9日、東京に住む同郷の盛郷重廣宛てに書かれたもの。復帰運動に取り組む泉芳朗の当時の心情が読み取れるほか、米国側との折衝機会を設けた盛郷重廣の功績などが記されており、日本復帰の裏側を知る貴重な資料として評価された。今後、町歴史民俗資料館内で展示、情報発信などを目指す。
盛郷重廣は1952年12月15日に行われた、泉芳朗が会長を務める奄美大島日本復帰運動協議会一団と米国のマーフィー大使の会見の機会をつくった功労者。手紙は、盛郷重廣の娘・石川八重さん(故人)の意向で今年4月20日に同資料館へ寄贈された。
資料館は5月から手紙の内容の調査を実施。10月、11月に開催した町文化財保護審議会での協議を経て、11月18日に町文化財に指定され、30日に町長室で報道公開した。
資料館担当者によると、手紙は全3枚で、マーフィー大使との会見機会をつくった感謝と再度協力を懇願する内容。大使更迭の報を受け不安や焦りを感じている泉芳朗の心情が表れた貴重な資料という。
資料館の担当者は「奄美群島が日本復帰する歴史の裏側で語られることのなかった一連の復帰運動の動きが現実的に捉えられ、泉芳朗以外の出身者の功績も知ることができる」と説明。町内では泉芳朗に関する資料がなかったことから、「この手紙の文化財指定を契機に、新たな資料の収集、公開、活用に努めたい」としている。
大久保明町長は「歴史を正確に掘り起こしていく価値があることを改めて感じた。奄美群島の日本復帰の真の歴史を学ぶことができる資料で、寄贈していただいた石川さんに感謝したい」と述べた。
同町では手紙の一般公開に向け、来年4月までに資料館内に展示スペースを設けるほか、奄美群島各市町村での巡回展も検討している。