希少種持ち出し防止へ 10月まで密猟・密輸対策周知 奄美空港で監視強化 環境省

2022年08月25日

政治・行政

来島者にチラシを配布して希少な動植物の保護を呼び掛ける関係者=7月16日、奄美市笠利町の奄美空港(環境省提供)

世界自然遺産の奄美大島で希少な動植物が島外に持ち出されるのを防ごうと、環境省は7月から、奄美市笠利町の奄美空港で密猟・密輸防止キャンペーンを展開している。乗客が野生生物を持ち込んだ際に、法令で捕獲や採取が禁止されている種など違法な行為ではないかどうかを調べるほか、来島者にチラシを配布して希少種の保護を呼び掛けている。同省は「動植物の捕獲や昆虫トラップの設置などには規制があることを知ってもらい、法令を順守してほしい」としている。

 

奄美大島では2019年、希少なカエル類などを奄美空港から持ち出そうとした男2人が種の保存法違反などの罪に問われた密猟事件が発生。空港関係者らが研修会を開くなど、希少種保護に向けた水際対策の強化に取り組んでいる。

 

密猟・密輸防止キャンペーンは、昆虫採集が盛んになるシーズンに合わせて実施。10月下旬にかけて、来島者が増えるお盆休みや連休など不定期に、同省と関係機関の担当者らが到着ロビーでチラシを配布。動植物の捕獲や採取などが規制されている奄美群島国立公園の保護区域や、法令による保護対象種、昆虫採集のルールやマナーなどについて普及啓発している。

 

乗客の手荷物や貨物の検査で動植物が確認されれば、調査員が持ち主の同意を得て種名や捕獲、採集場所などを調べる。法令違反の場合は空港関係者を通じて通報する。

 

同省によると、奄美空港で確認された野生生物の持ち出し件数は、21年度の10件余りから、22年度はこれまでに20件以上と大幅に増えている。今年7月にはクワガタ類などが大量に持ち出されるケースもあったが、法令違反となる行為は確認されていない。

 

同省奄美群島国立公園管理事務所の田口知宏国立公園管理官は「密猟、密輸防止のため、引き続き厳重な体制を取っていく」と述べ、来島者に向け「ルールとマナーを守って奄美の素晴らしい自然を楽しんでもらいたい」と呼び掛けた。