輪禍多発エリアで対策優先 報告書の骨子案示す 12月、ユネスコ提出 奄美・沖縄 世界遺産科学委

2022年03月25日

政治・行政

 「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島」の世界自然遺産地域科学委員会(委員長・土屋誠琉球大学名誉教授、委員13人)の会合が24日、オンラインで開かれた。国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産委員会が報告を求めた課題について、対策の方針などを盛り込んだ骨子案が示された。増加傾向が続くアマミノクロウサギのロードキル(交通事故死)について、事故が多発する奄美大島9カ所、徳之島5カ所を優先して対策を検討するエリアと位置付けた。

 

科学委員会は学識経験者らで構成し、奄美・沖縄の自然環境の保全管理について専門的な助言を行う。オンラインで委員と関係機関の約100人が出席した。

 

昨年7月の奄美・沖縄の世界遺産登録に伴い、世界遺産委員会が示した課題は▽特に西表島における観光客の制限(観光管理)▽アマミノクロウサギ、イリオモテヤマネコ、ヤンバルクイナなど絶滅危惧種のロードキル対策│など4項目。12月1日までにユネスコへの報告書の提出を求めた。

 

課題ごとに関係機関と専門家でつくる特別チームが報告内容を検討し、骨子案をまとめた。絶滅危惧種のロードキル対策については、▽事故の発生状況▽対策の実施状況と効果検証▽対応方針│を盛り込む。

 

環境省によると、クロウサギのロードキルは2021年に奄美大島、徳之島で過去最多の計73件に上った。事故の発生状況や集中度合いなどから対策を優先するエリアを分析し、奄美大島は瀬戸内町の町道網野子峠線周辺など、徳之島は天城町と徳之島町間の県道松原轟木線周辺などを抽出し、地図に示した。

 

沖縄側で野生生物用の地下通路「アンダーパス」の設置など、事故防止対策の取り組みが盛り込まれたのに対して、「奄美大島や徳之島の対策が示されていない」と委員から指摘があり、環境省の担当者は「沖縄側に比べて具体的に盛り込める事例がない」と述べた。

 

委員から「ハード面の対策だけでなく、(ドライバーへの)普及啓発やナイトツアーのルールなどのソフト面も記載すべき」という意見があった。今後の取り組みについて、「生活道路と山の中の林道では対策が異なるので検討してほしい」と要望もあった。