金作原にバイオトイレ整備 環境保全と観光利用両立へ 旅行社のふるさと納税活用 奄美市名瀬

2023年06月10日

政治・行政

テープカットで環境保全型トイレの落成を祝う関係者=9日、奄美市名瀬

奄美大島を代表する自然観察スポットとして知られる世界自然遺産地域の金作原国有林(奄美市名瀬)近くに、環境保全型トイレ(バイオトイレ)が設置された。阪急交通社(大阪市、酒井淳代表取締役社長)の企業版ふるさと納税を活用して市が整備した。現地で9日、落成式があり、関係者ら約30人が出席。環境保全と観光利用の両立に期待を寄せた。

 

金作原は亜熱帯照葉樹の森に多くの希少な動植物が生息している。名瀬市街地から車で約30分と近く、巨大なヒカゲヘゴ群落やオキナワウラジロガシの巨木が人気を集める。観光客の増加を受けて、2019年2月に認定ガイドの同行制や車両台数制限などの自主ルールが導入された。

 

奄美市世界自然遺産課によると、金作原周辺には水道や電気の設備がなく、トイレは整備されていなかった。観光客から現地への設置を求める声は多く、ツアーを催行する阪急交通社からふるさと納税の申し出を受けて設置を決めた。同社の寄付金500万円を含め総事業費約1300万円。

 

トイレを設置したのは、名瀬市街地から金作原方面へ向かう主要ルートの林道知名瀬線と市道奄美中央線の三差路の市有地で、世界自然遺産地域の入り口。主な散策路となっている金作原林道までは約1・5キロ。

 

バイオトイレは洋式と男性用を備え、水を使わずに微生物の力でし尿を分解する。太陽光発電で稼働し、1日に処理できるのは20回。市は緊急時の利用に限定しており、通常は施錠して希望したガイドに鍵を貸与する。12日から運用を開始する。

 

阪急交通社は社会貢献活動の一環で、07年の屋久島を皮切りに国内の世界遺産地域などにバイオトイレを寄贈しており、金作原は7件目。落成式で同社の能上尚久専務は「奄美はさまざまな動植物が生息し、海や食も含め素晴らしい場所。トイレを気にしながら観光していた人がいたと思う。少しでも手助けになれば」と話した。

 

安田壮平市長は感謝の言葉を述べ、「安心で快適な観光と環境への配慮の両立は、今後の奄美観光に求められる取り組み。豊かな自然環境の保全に努め、世界に誇る島の宝を体感してもらえるよう取り組む」と語った。