「人権、尊厳とは何か」 ハンセン病、家族が語る 奄美市生涯学習講座

2023年03月18日

地域

ハンセン病による差別や偏見について学んだ生涯学習講座=11日、奄美市名瀬

奄美市の生涯学習講座が11日、奄美市名瀬の市民交流センターであった。「奄美の近現代史を学ぶ」をテーマに、父親がハンセン病患者だった奄美市名瀬の赤塚興一さん(84)やハンセン病療養施設である国立療養所多磨全生園(東京都)でソーシャルワーカーとして勤務した中村保さん(72)らが講演。差別や偏見と闘ってきた経験を語り「人権や個人の尊厳とは何か」と参加者へ問いかけた。

 

赤塚さんは3歳の時に父がハンセン病に感染。父は鹿屋の療養所を経て奄美和光園(奄美市名瀬)に強制隔離された。赤塚さんは優しかった友人や親族、教師からもトラウマとなるほどの差別の言葉をぶつけられ傷つき、次第に父を憎むようになったという。夜中に園を抜け出し自宅へ帰ってくる父に「何で帰ってきた。早く園に戻らんか」と怒鳴りつけ、島を離れても父の病を隠し続けたと話した。

 

一方で「3~9歳まで父は家族と暮らしたが、母もきょうだいも、誰も感染していない」と主張し、約90年もの間、患者を強制的に隔離した政策を批判。ハンセン病家族訴訟の原告として闘った裁判を語り「国の政策によって多くの人たちの人権、尊厳、可能性を奪ってきたことを理解してほしい」と参加者へ訴えた。

 

中村さんは高校卒業後に上京し、多磨全生園に勤務。ハンセン病を「世の中で一番忌み嫌われた病気だった」と表現し「患者は入所すると名前を変えさせられ、生前も死後もその存在を隠された。家族を守るため個人の尊厳を奪われた」と話し「差別や偏見は人間から生きがいを奪う。健全な社会の在り方を考えよう」と語り掛けた。

 

講座には約30人が参加。赤塚さんの講話に続き、講座生の宮山紘一さんが西郷隆盛と共に京都に上京した徳之島出身の青年、仲祐(なかゆう)について記した書籍を紹介した。