冬季来遊のザトウクジラで講演 奄美市名瀬
2018年12月18日
地域
ホエールウオッチングシーズンの本格化を前に、奄美近海に来遊するザトウクジラに関する講演会が16日夜、奄美市名瀬の奄美博物館であった。沖縄美ら島財団総合研究センターの岡部晴菜さんがクジラの生態など観察を楽しむ豆知識を紹介。近年の研究の成果から「奄美は新しい繁殖地として重要な海域になる可能性がある」と期待を示した。
講演会は環境省の奄美群島国立公園奄美大島周辺海域における鯨類調査等業務事業の一環で、奄美海洋生物研究会(興克樹会長)が主催。約50人が来場した。
興会長が同島周辺海域の鯨類調査について報告。2018年シーズンのザトウクジラの出現確認数は前季より16頭多い699頭。ホエールウオッチング参加者も前季を約600人上回る2185人と、ともに過去最多だった。大浜海浜公園(奄美市名瀬)の見晴らし広場や奄美空港(同市笠利町)の展望デッキなど、陸上からクジラを観察できるポイントも紹介した。
岡部さんはクジラの生態などについてクイズを交えて紹介。冬季に繁殖のため餌場のロシア近海などから沖縄近海へ南下してくるザトウクジラについて、尾びれの模様や形状による個体識別調査から、奄美と沖縄で確認されたクジラは同じ集団である可能性が高いと説明した。
奄美近海は、繁殖海域である沖縄以南への回遊経路であるほか、奄美だけで見られる個体も増えているとして、「(来遊する)ザトウクジラは増えているので、沖縄だけでなく奄美を新しい繁殖地として選んで来ているかもしれない」と考察した。
沖縄で死亡したイルカの体内から釣り餌袋など大量のプラスチックごみが見つかった事例を紹介。「ごみを捨てると、イルカは餌と間違えて食べてしまう。イルカやクジラと共存できる海にしていきたい」と呼び掛けた。