子どもの感染対策で苦慮 龍郷町のコロナ近況 GW、地元診療所に負荷

2022年05月14日

地域

 奄美大島で新型コロナウイルスの爆発的感染が起きた1月以降、群島内の感染状況が落ち着かない。中でも龍郷町の累計感染者(12日現在)541人は昨年末までの約9倍。人口当たりで県内最多とみられる。感染者は幼児とその家族が多く、関係者は子どもの感染対策に苦慮。医療体制が縮小するゴールデンウイーク(GW)は、地元の診療所に大きな負荷が掛かった。同町の近況からコロナ対応の課題を追った。

 

■感染者数、人口の1割迫る

 

同町の累計感染者数は、初確認から昨年末まで1年余りで59人。今年は月内の感染者数が1月に106人を記録して以来、2月94人、3月46人、4月100人と高い水準が続いた。5月も12日時点で137人に上り、累計541人は人口約6千人の1割に迫る勢いだ。

4月29日~5月8日のGW期間、同町では計111人の感染者が確認された。10歳未満が48人と圧倒的に多く、30代23人、40代11人、20代・50代各8人と続いた。保育施設を基点とした家庭内感染が目立った。

 

今年のGWは、3年ぶりに新型コロナの緊急事態宣言など行動制限がなく、帰省や観光による来島が増えた。懸念されるのは、経路を追えない市中感染。GW明けの9日以降、町内では新規感染者の3割が60代以上と、重症化リスクの比較的高い高齢世代でも感染が広がりつつある。

 

■保育施設、予防尽くすも…

 

園児の情操教育に触れ合いが欠かせない保育施設にとって、長引くコロナ禍は重い精神的負担となっている。副反応への懸念もあり、幼児を含む5~11歳のワクチン接種は広がりが鈍い。現場は「発症するまで感染に気付きようがない。どうすれば拡大を防げるのか」と頭を抱える。

 

多くの保育施設は基本的な感染予防策として、登園前と保育中の体調確認やこまめな消毒、換気などを徹底している。一方、幼児のマスク着用については感染予防効果に限らず、熱中症など感染症以外の健康リスクも考慮され、施設ごとに対応が分かれている。

ある保育施設長は「園児が感染しても家族以外は『濃厚接触者』とされないことが多く、園内での予防を尽くすしかない。園は『原則開園』として家庭側に登園自粛を求めるが、保護者だって仕事は簡単に休めない。園や各家庭の努力だけでできる対策には限界がある」と不安そうに語った。

 

■休日診療「供給足りない」

 

龍郷町中勝の国道沿いにある「みんなの診療所」は4月29日~5月8日、午前9時~午後5時に開所。10日間の受診者の3割を占める194人に抗原検査を行い、92人が陽性だった。原純所長は「(爆発的感染があった)1月以上にコロナ対応の負荷が増した」と振り返る。

 

感染防護服の着脱や玄関先での外来受け付け、届出資料の作成などコロナ関連の業務負担は重く、診察時間を圧迫。職員や関係者が感染する事態にもなったが、「感染拡大は『災害』(一時的に医療需要が高まっている状況)」と考え、事前に決めていた優先順位に基づいて業務を選別し、何とか診療を続けた。

 

「すべての来院に対応できず、歯がゆさを感じた」と原所長。沈静化しない感染状況を踏まえ「休日(特に連休)診療は需要に供給が追い付いていない。医療体制の拡充や情報発信について、次の連休時期までに広域的な議論も必要ではないか」と指摘した。