学校存続⑤~奄美市里親留学 学校は地域の灯台 将来を見据えた選択肢

2018年03月14日

地域

「奄美くろうさぎ留学」の実施に向けて開かれた先進地説明会。参加者が学校存続がもたらす波及効果について理解を深めた=2月8日、奄美市名瀬の奄美文化センター

「奄美くろうさぎ留学」の実施に向けて開かれた先進地説明会。参加者が学校存続がもたらす波及効果について理解を深めた=2月8日、奄美市名瀬の奄美文化センター

 奄美市は2月7、8の両日、2018年度から実施する離島留学支援事業「奄美くろうさぎ留学」の説明会を市内3地区で開いた。留学制度を導入する先進地から里親経験者ら3人を招き、地域住民や行政関係者計約100人が参加。地域が活気を取り戻すきっかけや、学校存続がもたらす波及効果について理解を深めた。

 

 里親留学制度を導入して22年の実績がある種子島・南種子町の小脇隆則さん(53)は、自身の里親経験を交えつつ、「里親はどんな子が来るか不安がある。里親と学校、実行委員会が指導の方向性について共通理解し、実践することが大切」と助言。里親4年目の立石はつ江さん(53)は「子どもも里親も勉強させられることがたくさんある。心配ない。どんとこい、という感じで受け入れて」と呼び掛けた。

 

 佐賀県唐津市地域づくり課の離島地域コーディネーター・小峰朋子さん(48)は、17年度から始めた「島留学」の取り組みを紹介。同市では、約15年前に留学制度の導入が検討されたものの、住民の理解が得られず実現しなかった経緯がある。その後、「子どもの声を絶やしたくない」という島の人々の切実な思いが制度導入を後押しし、初年度は二つの島で計5人の留学生を受け入れた。

 

 小峰さんは「募集時に子ども本人が行きたがっているかしっかり確認することが大事」と述べ、里親が悩みを抱え込まないためにも、周囲のサポート体制づくりが不可欠と強調した。

 

 参加者からは「里親の責任は重大で大変さも伴う。しかし、それ以上に留学生が与える影響は大きいと思う」「集落の全員が快く留学制度を受け入れることが望ましい」「集落の人々が学校が無くなることを真剣に考えないといけない。まずは集落の意識改革を」といった感想や意見が寄せられた。

 

 奄美市の留学制度では、留学生に少人数ならではのアットホームな雰囲気の学校生活や自然体験活動、地域との関わりなどを通して、奄美を第二のふるさとと感じてもらうことを目標に掲げている。

 

 制度は、対象校区の自治会長や校長、PTA会長、校区活性化協議会長で構成する奄美市里親留学制度連絡協議会(事務局・市教育委員会学校教育課)が中心となって運営する。▽留学生の募集・決定▽里親の募集・委嘱▽留学生に関する相談・連絡業務といった役割を担う。里親に対しては、同協議会から月額7万円(実親負担金、市補助金各3万5千円)が支払われる。

 

 制度導入初年度に当たる18年度の受け入れ留学生は、今年1月10日から2月末まで募集した。学校教育課によると、申し込みを含めた問い合わせが約20件あり、留学生7人の受け入れが決まっている。また、里親の引き受けに前向きな住民も複数おり、19年度以降も見据えて準備を進めているという。

 

 地域の中には「子どもが減って学校がなくなっていくのは時代の流れ」「地元の子どものことを思うと統廃合は仕方がない」との考えもある。思い出を刻んだ学びや―。学校は地域の灯台とも呼ばれる。その火をともし続けるかどうかは、シマ(集落)の人々の思いに委ねられている。(おわり)      (向慎吾)