推薦書修正方針を了承 北部訓練場2800ヘクタール編入 奄美・沖縄世界自然遺産科学委 鹿児島市
2018年09月13日
地域
「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島」世界自然遺産候補地科学委員会(委員長・土屋誠琉球大学名誉教授、13人)の会合が12日、鹿児島市内のホテルであり、今年の自然遺産登録が見送られた奄美・沖縄について、最短で2020年の再挑戦へ向けた推薦書の修正方針を了承した。沖縄島北部の米軍北部訓練場返還地約4千ヘクタールのうち約2800ヘクタールを推薦区域に編入する見通し。環境省は年内に修正案をまとめて同委員会に諮り、来年2月に正式な推薦書を国連教育科学文化機関(ユネスコ)に提出するとしている。
奄美・沖縄は今年の世界遺産委員会で自然遺産登録の可否が決まる最終審査を予定していたが、ユネスコの諮問機関・国際自然保護連合(IUCN)は5月、推薦区域の見直しを求めて「登録延期」を勧告。政府はユネスコへの推薦を取り下げた。
科学委員会は環境省、林野庁、鹿児島、沖縄両県が2013年に設置。候補地の遺産価値の証明や自然環境の保全管理について学識経験者らが専門的な助言を行っている。推薦取り下げ後の開催は初めて。
会合で環境省はIUCNの勧告に沿って推薦区域の修正方針を示した。勧告で特に重視された沖縄島北部の推薦区域に隣接する北部訓練場返還地は推薦取り下げ後の6月、やんばる国立公園に編入された。そのうち最も厳正に保護される特別保護地区と第1種特別地域を遺産の推薦区域に追加する。同島の推薦地の分断が解消され、「(登録の条件となる)完全性が強化される」としている。
西表島の北部・北西部の河川について推薦区域の一部編入を検討するほか、不適切とされた小規模な分断地について見直しを行う。
遺産の価値を示す評価基準(クライテリア)については勧告を踏まえて「生態系」を見送り、「生物多様性」に絞って再推薦する。
ユネスコへの推薦は今後1国1件に制限されるため、奄美・沖縄は同じ20年の登録を目指す世界文化遺産候補の「北海道・北東北の縄文遺跡群」と競合する見込み。環境省は当初9月末までとしていたユネスコへの推薦書暫定版の提出について「提出は任意。文化遺産との一本化を関係省庁で調整している」と述べるにとどめ方針を明らかにしなかった。両候補のどちらを推薦するかは政府が今後判断する。