統治の仕組み解説 名瀬出身の箕輪さん、「大島御規模帳から見る奄美近世史」出版

2022年02月10日

地域

150カ条からなる条文を分かりやすく解説した「大島御規模帳から見る奄美近世史」

奄美市名瀬出身で奄美近世史を研究している箕輪優さん(70)=東京・町田市=は昨年11月、「大島御規模帳(きもちょう)から見る奄美近世史」を自費出版した。大島御規模帳は、薩摩藩が道之島(奄美諸島)統治のために定めた150カ条の法令集。代官や島役人の心得を説き、ノロ祭祀(さいし)やユタの祈祷(きとう)の制限、禁止など島民生活に関する事項も定めた。本書は条文の読み下し文、解説を加えた労作。近世奄美をひもとく貴重な一冊だ。

 

本書は①前編「大島御規模帳」を紐解(ひもと)く②本編「大島御規模帳」全五十箇条を読む③附編「郡奉行物定規模帳」「物定」「大嶋用夫改規模帳」を読む④付記「大島御規模帳」以後における道之島社会の変容について―で構成。資料として「琉球(沖縄)・奄美・薩摩(鹿児島)関連史年表」も加えた。

 

前編は大島御規模帳の写本発見の経緯や布達時期、特徴的な条文の解説。「はじめに」では薩摩藩が奄美、琉球に侵攻した当時の財政、政治状況を解説した。

 

本編は150カ条全文と読み下し、解説文を付けた。条文は▽代官や附役人の心得▽ヤンチュの取り扱い▽日本人との同化禁止▽ノロやユタの規制・禁止事項▽島役人の不正防止▽島民の身分▽密告の奨励―など多岐にわたる。

 

道之島に赴任する役人は身内の同伴を禁止。島民が日本人と間違われることのないよう紛らわしい名前や服装を禁じた。ノロ祭祀が行われる神山の伐採を進めるよう通達し、焼酎の製造も禁じた。櫂(かい)船の製造も禁止。役人の不正防止から島民生活まで細かく規定した。大島御規模帳が奄美統治の指針になったことが分かる。

著者の箕輪さん

 

箕輪さんは大島実業高校を卒業後、東京消防庁に就職。在職中に國學院大学法学部(2部)に入学、卒業。2011年に定年退職し、成城大学大学院で学んだ。消防士から奄美史研究者に転じ、18年2月には「近世・奄美流人の研究」を自費出版した。働きなが学び、自費で調査研究した苦労人だ。箕輪さんは「多くの人々が奄美の歴史を知ることに寄与できればこれ以上の達成感はない」と話している。

 

本書は定価3850円(税込み)。ファクス03(3294)2177JACで購入できる。