高潮、津波に備え「危険潮位」設定 宇検村 個別避難、事前の訓練を

2022年06月27日

地域

危険潮位の周知のため開かれた住民説明会=24日、鹿児島県宇検村の元気の出る館

鹿児島県宇検村は2021年度から鹿児島大学などと連携し、台風による高潮や地震の津波に備えた避難行動要支援者向けの個別避難計画策定を進めている。取り組みの一環として村はこのほど、各集落の測量データを基に床上浸水が起こる恐れのある基準を示す「危険潮位」を設定し、24日には周知を目的とした住民説明会を同村湯湾の元気の出る館で開いた。

 

同村の居住域は険しい山に囲まれた沖積平野(河川の堆積作用で形成された地形)に立地し、大半が標高5メートル以下。高齢者が多いことから、災害時の避難を支援する体制づくりも課題となっている。

 

同大学総合教育機構共通教育センターの岩船昌起教授(54)らは2月と3月、村内の各集落で測量調査を実施。現在、気象庁が定める同村の高潮警報の基準潮位は2・4メートル、注意報は1・5メートルであるのに対し、標高が1メートル未満の地点が測定されるなど、基準値の見直しが必要となっていた。

 

5月31日の村防災会議では、標高の低い集落に合わせて危険潮位を1・8メートルと定め、村の防災計画に盛り込むことが決まった。これに伴い、高潮警報、注意報の基準潮位も今年度中に引き下げられる予定。

 

住民説明会には各集落の区長や消防団員ら約40人が参加。前半は名瀬測候所の宮﨑隆盛地域防災官(50)が高潮や津波が起こる仕組みなどを解説し、後半は岩船教授が測量結果を踏まえ、集落ごとの浸水段階や避難行動などについて説明した。

 

岩船教授は「床上浸水が始まる前の避難が必要」とし「標高や家の構造、居住者の体力などによって避難の仕方は異なる。一人一人の個別避難計画を決めて訓練し、避難行動要支援者本人とも話し合っておくことが大切」と訴えた。

 

標高が最も低かった湯湾の干拓地、部連、名柄では、河川からの越流などにより、危険潮位に達した時点で床上浸水が想定される場所もある。岩船教授は高潮注意報を目安にした早めの対応を呼び掛けた。

 

出席した名柄集落の東秀則区長(66)は「実際の数値を出してもらったので分かりやすかった。消防団などの助けを借りながら、集落の人たちにも周知できるよう考えたい」と話した。