「平和とは何か伝えたい」 鹿児島縦断の一行が表敬訪問 奄美市

2023年08月19日

社会・経済 

「結人プロジェクト」のメンバーと安田壮平奄美市長(右から3人目)。横断幕の題字は大島高校書道部員が筆を振るった=18日、奄美市役所

戦後の米軍統治下で、日本復帰を訴え奄美から本州へ渡った「密航陳情団」。命懸けで海を渡った彼らの航跡をたどり、その意志を受け継ごうと、トカラ列島から鹿児島市まで7日間、アウトリガーカヌーで356・46キロの旅を達成した「結人(ゆいんちゅ)プロジェクト」のメンバー7人が18日、奄美市役所に安田壮平市長を表敬訪問した。キャプテンの白畑瞬さん(38)は後援に感謝し、「心ひとつにして知恵を出し合い、島々をつむぎ、目標を達成することができた。次は『平和とは何か』を伝えていきたい」と次世代へ語り継ぐ意気込みを語った。

 

一行は7月21日に十島村宝島を出発。6港を経由し同28日に鹿児島市へ到着した。寄港地では1953(昭和28)年の復帰当時を知る人々と交流し、物資の密輸があった島の様子を学んだ。航海中は天気予報からは見えない高波や潮流、サメとの遭遇など外洋の厳しさにも直面。開聞岳が見えたときは安堵(あんど)と喜びで万歳三唱したという。

 

メンバーは「命懸けで海を渡り見る景色は本当に美しかった」「こいで終わりではない。経験をどう伝えていくかが大切」「かつての国境だった北緯30度。口之島には道路に線が引かれていたが、海に線はない。そのことを子どもたちへ伝えていきたい」と、旅を通じ実感したことを報告した。

 

安田市長はメンバーの苦難を慰労し「まさに密航陳情団の追体験。簡単にできることではない」と称賛。「体験した人にしか分からない苦労がある。先人たちの思いや貴重な経験を子どもたちへ語り継いでほしい」と話した。

 

プロジェクトのメンバーは後日、奄美市で報告会を開く。