コロナ影響で子牛価格下落 奄美群島
2020年04月12日
社会・経済
新型コロナウイルスの感染拡大による消費の冷え込みなどが影響し、子牛価格が下落している。3月初旬にあった大島地区子牛競り市の平均売却価格は62万8553円で、前回1月競りに比べて6万538円(8・8%)の大幅な下落となった。感染拡大の収束が見通せない中、奄美群島内の肉用牛生産農家からは「先行きが不安だ」との声が上がっている。
県肉用牛経営者会議会長で、肉用牛420頭を飼育する㈱永吉ファーム(徳之島町)の永吉輝彦代表取締役(51)は「子牛価格はもともと高値が続いていた。3月の価格は思ったほど下がらず、ただちに赤字になるほどではないのでほっとした」と安堵(あんど)する。
一方で「和牛消費を支えたインバウンドの落ち込みが激しく、牛肉は在庫がだぶついている。肥育農家の出荷見合わせが増えて牛舎が空かなくなれば、子牛の購入にも影響が及ぶ。コロナの影響は長引きそうで、先行きが不安だ」と話した。
和泊町で親牛、肉用牛の計8頭を育てる森富隆さん(73)は「景気が冷え込む大都市圏の需要が上がらない限り、子牛の値段は上がらないだろう。5月に2頭を競りに出す予定だが、価格は下がると覚悟している。厳しい時期だからこそ、購買者が喜ぶような良質な牛を育てなければいけない。行政などで飼料の購入補助があれば助かる」と支援を求めた。
喜界市場の3月子牛競りは平均売却価格が1月を8万6908円下回る60万1538円で群島内で下落幅が一番大きかった。
喜界町で育成を含め母牛40頭を飼育し、子牛を年間30頭出荷している栄常光さん(65)は「喜界は各農家の規模が比較的大きく戸数は少ないため、1農家の子牛の出来不出来が全体の価格に影響しやすい」と説明しつつ、「過去にも厳しい状況を乗り越えている。長期化するかもしれないが増頭などでカバーしていきたい」と前を向いた。