ドローンで病害虫防除 タンカンへ、検証進め導入 奄美市で実演、検討会
2024年05月01日
社会・経済
奄美産かんきつのエースに位置付けられるタンカン栽培について、奄美大島では今年度から、農業用ドローンを活用した病害虫防除技術の実証プロジェクトが始動する。協力農家のほ場に調査区を設け、調査区ごとに防除作業が終了する12月時点の品質調査や奄美大島選果場の光センサー選果データを比較して防除効果の検証を進め、将来的なドローンによる防除技術の導入を目指す。
近年有効な防除技術として全国でドローンによる農薬散布が実施されている。かんきつ栽培では4月現在、ドローンで散布できる農薬が14種類登録され、年間を通した防除が可能になっている。
奄美大島では労力不足や農薬散布に対する意識の低さなどを背景に、適期に農薬散布されない事例が多い。島内にはドローンによる農薬散布作業を請け負う業者が誕生し、受託環境が整いつつあることから、県園芸振興協議会大島支部(事務局・県大島支庁農政普及課)は30日、奄美市内でドローン防除実演と検討会を開催。生産者やJA、行政の農政担当者ら約30人が参加した。
同市名瀬の叶農園であった現地実演会では、サトウキビとタンカンのほ場で農薬散布作業を請け負う業者の担当者が、概要説明とドローンによる散布作業を実演。参加者は10アール当たり約5分で農薬を散布できる速さや飛散状況などを確認した。
その後、県農業開発総合センター大島支場で行われた検討会では、事務局が散布できる農薬の登録状況や全国での散布の試験成果などについて説明。試験結果からメリットとして作業時間の削減や(手散布と比較して)遜色ない品質の確保などを挙げ「奄美大島で技術導入することで潜在的なタンカン生産量が増え、市場性や経済的価値の向上が期待できる」と強調した。
意見交換では「ドローンでは高濃度の農薬を散布するが影響はないか」「普段農薬散布を行わない生産者も実証農家に加えてはどうか」などの意見があった。
実証プロジェクトでは奄美柑橘(かんきつ)クラブ員から協力農家を募集し、各ほ場に手散布区と空散布区を設ける。防除担当業者と農家で防除計画を作成して5~11月に防除を行い、病果果実の発生度合や収穫果実の等級比率を把握、データ化する。各種データは30日の会の出席者で構成するプロジェクトチームで共有し、今後の方針を検討する。