備蓄所、再設置議論進まず 血液製剤供給体制の検討会 奄美市

2023年10月18日

社会・経済 

解決策を模索し議論を重ねる血液製剤供給体制検討会の出席者ら=17日、奄美市名瀬の奄美会館

奄美大島の医療機関に輸血用血液製剤を安定して供給する方法を探る「奄美大島における血液製剤供給体制検討会」の第4回会合が17日、奄美市名瀬の奄美会館で開かれた。これまでに、県立大島病院や大島郡医師会、奄美5市町村は奄美大島への血液備蓄所の再設置を要望してきたが、この日の検討会でも打開策を見いだすには至らなかった。

 

第4回検討会には県くらし保健福祉部薬務課が事務局となり、大島郡医師会や名瀬保健所、県赤十字血液センター、奄美大島5市町村の保険福祉課長ら21人が出席し協議した。

 

奄美大島では2018年に血液備蓄所が撤退。その後、島内の医療機関は県本土の赤十字血液センターから、直接航空機で血液製剤を取り寄せなければならない事態が続いている。

 

その結果、夜間などで緊急事態が発生し、大量に血液が必要となる時に即時に取り寄せることができなくなった。また血液製剤は一度取り寄せると返品ができないため、未使用のまま有効期限が切れて廃棄せざるを得ない血液製剤が増えたことも課題となっている。

 

廃棄血を減らす取り組みとして、県赤十字血液センターや県立大島病院は、専用の搬送用小型冷蔵庫を使い、奄美で未使用の血液製剤を返品し、本土の病院で利用するよう回す「ブラッドローテーション(BR)」を試した。しかし経費などの面から本格運用には至っていない。

 

血液備蓄所の再設置要望に対し県赤十字血液センターは、設置費用や運営費の問題から難しいとする回答を続けてきた。

 

第4回検討会では血液センターがあらためて「なぜBRがだめで血液出張所でなければだめなのか」と問題提起。これに対し県立大島病院は「BRで運べるのは血液製剤の一部に限定される。メリットが少なく焼石に水」と述べ、「本土と異なり、離島において必要なときに必要な血液製剤があるようにするには出張所の設置が不可欠」と訴えた。

 

また県立大島病院は「会議の本質」として「血液製剤の安定供給の責務はどこにあるのか」と追及。県赤十字血液センターは「どうしようもない現実もある」と述べ、「BRをしないわけでもないのでご理解いただきたい」と回答した。さらに「備蓄所があれば大量に(血液製剤を)置けるわけではない。(廃棄血として)1本たりとも無駄にはできない」と回答した。

 

奄美市保健福祉部は「深夜の3時に供血をしたことがある。県立大島病院が野戦病院のような非常事態だった。このような事態が頻繁に起きるようではだめだ」と指摘した。