機屋を「生きた紬博物館」に 大島紬の文化的価値を重視 龍郷町 夢おりの郷

2024年06月28日

社会・経済 

島のクワで蚕を育てる南会長

龍郷町大勝で本場奄美大島紬を製造する「夢おりの郷」。歴史ある織り機や方眼紙による図案、時代を彩った大島紬の現物など多くの資料を保有する。このほど、これらを一堂に集約。大島紬を広く知ってもらうため、自由に見学できるよう社内を再構築した。次代を見据えて、従来の機屋のイメージを刷新。大島紬の文化的価値を発信する「生きた紬博物館」

貴重な図案や大島紬の展示

を目指す。

 

同社は2001年、現会長の南祐和さん(77)が奄美市名瀬から現在地に新築移転した。国道58号に面し、鉄筋コンクリート一部2階建て2800坪。地元では「水車のある紬屋さん」として知られる。

 

大島紬は図案、締め、染色、加工、織りなど分業で成り立つが、同社は移転当初から生産工程を集約。一般にもモノ作りの全体が見えるような生産体制をとってきた。今回は、体験ゾーンと製作ゾーンを併置。保有する紬の現物資料や文書資料(約1000点)を整備、着付け室や写真室、養蚕室、研修室など15の工程を見学・体験できるよう配置。入り口に工程の案内図も設置した。現物資料には昭和初期から20年代の泥大島や中振袖泥大島、割り込み式と呼ばれる泥大島のほか、芭蕉布の着物、現代風のモダンな大島も着姿(マネキン)で展示している。

 

特徴は「これまで」を展示するだけでなく、「今」や「これから」も示す生きた紬博物館を目指していること。例えば、今では作る人が途絶えたリュウキュウマツの織り機。約70年前のものを含め15台を修理しつつ現役で稼働させている。紬工程最初の図案(設計)は、方眼紙から最新のコンピューターによるものまで約3000柄を保有する。過去の図案だけでなく、見た人が「この紬がほしい」と注文できるよう「これから製造する新たな図案」もいくつか展示。実際、注文を受け、製作に入ったケースもある。江戸後期の「南島雑話」など文献資料に登場する芭蕉布。現在も糸芭蕉から糸を取り、すがすがしい帯に織り上げている。

 

1960年代まで群島で盛んだった養蚕。南会長は15年前から復活に取り組み、現在も継続中。黄金の繭で年2~3回糸を取り、作品に取り入れている。南会長は「島内外を問わず、多くの人に大島紬に関心を持ってもらいたいと思って始めた。次代を担う若い人たちや小中高生の学習にも活用してもらえるよう工夫した」と話している。見学は無料。木曜日定休。問い合わせは電話0997(62)3888。