血液不足に危機感 緊急手術「綱渡り」 県立大島病院 台風6号

2023年08月08日

社会・経済 

残りわずかとなっている県立大島病院の輸血用血液備蓄=7日正午ごろ、奄美市名瀬の県立大島病院

長引く台風6号の影響で、奄美群島の医療機関にも影響が出ている。奄美市名瀬の県立大島病院では、定期船の欠航により7月末から医薬品が不足し始め、ドクターヘリも4日から県本土へ避難。島外搬送が必要な場合は、自衛隊に災害派遣を要請せざるを得ない状況だ。輸血用血液の在庫も深刻で、病院側は「この数日に外傷患者や緊急手術が2、3件発生すると供血者に頼らざるをえない『綱渡り』の状態」と危機感を募らせている。

 

血液製剤について、上野伸広臨床検査技師長は「台風が来ることを見越して多めに発注していたが、ここまで長引くとは予想できなかった」と話す。

 

奄美大島では、2018年に民間の血液備蓄所が撤退した影響で、輸血用血液を血液センター(鹿児島市)に直接発注せざるをえない。発注から納品までに要する時間は最短でも5時間、最長で24時間で、航空路が欠航する台風時などは数日間届かない。

 

緊急手術で血液製剤の在庫数を使い切った場合、「緊急時供血者登録制度」に登録している島内の献血ボランティアに電話で血液の提供を求め、同病院で一人ひとりから集めることになるが、荒天時は供血者の来院も困難となる。

 

麻酔科の大木浩部長は「院内の血液の在庫状況は市民からは見えないが、実際には『綱渡り』状態。輸血は迅速さが求められ、一刻の猶予も許されない。台風時などのリスク減のためにも奄美大島に血液備蓄所が必要だ」と訴えている。

 

血液製剤以外の物資不足も深刻だ。台風6号の接近で7月末から画像検査の薬剤や医薬品が届いておらず、検査延期や内服薬などの長期処方を控えるなどして対応。食材も不足しており、入院患者の給食メニューを簡素化している。

 

台風6号は同病院以外にも影響を及ぼしている。

 

徳之島徳洲会病院では使い捨てのエプロンや乳製品などの入院食が不足し、島内のグループ施設から分けてもらうなどして工面。勇利幸事務長は「応援の医師も来島できず、診療にも影響が出ている。災害時でも不可欠な人材や物資を離島に輸送できる体制が必要だ」と指摘する。