合同会社で一括集荷販売へ 五不透明な流通抑制、安定生産へ 大和村産スモモ
2025年05月17日
社会・経済

大和村で栽培されているスモモ。今期から村による一括集荷販売が始まる=16日、大和村
初夏の味覚として人気が高い「奄美プラム」(スモモ)の奄美大島最大の産地である大和村は今期から、集出荷体制を試験的に変更する。JAあまみ大島事業本部による共販体制から、村が100%出資する「合同会社ひらとみ」を窓口とした集荷販売へ一括。島外のベトナム企業の買い取りによる流通の不透明化を抑制するとともに、県内トップの生産量を誇るスモモの安定生産を目指す。一方、JAの共販量が前年比で9割近く減少することから、共販体制への影響が懸念される。
村産業振興課によると、村内の今期の生産者は約130人、栽培面積は40ヘクタール。今年2月の着花数は多かったが、雨天や突風の影響で受粉率が低く、着果量は減少。2~4月に低温が続いたこともあり、生産量は前期比11トン減の20トンを見込む。
村内では数年前から、ベトナム業者による買い取りが顕在化。昨年は島内在住の業者に加え、県外のベトナム業者4社も参入し、直接果樹園に出向いて選果場を通さずに小玉や熟す前の青い果実など規格外品扱いのスモモをJA共販より高値で買い取るなどしたことから、流通の不透明化と生産者間で栽培管理の二極化が進んだ。
これらの課題解決に向け、JAあまみ大和村果樹振興会と村は昨年から対応を協議。今年4月、合同会社ひらとみによる村産スモモの集荷販売の試験導入を決めた。
合同会社ひらとみへの出荷申し込みは約5トン(15日現在)。同課の福本新平課長は「村による一括集荷販売はベトナム業者が将来撤退した際、村内で高品質なスモモを栽培できる体制を維持することが目的」と説明する。
販売先は名瀬中央青果や加工用、地元在住ベトナム業者などを予定しており「村による一括集荷販売は試験的な措置で、生産量が増えればJAとの取引も協議する。農家の所得向上につながる単価設定を目指す」と述べた。
一方、今期から大和村からの共販出荷がストップしたJAあまみ大島事業本部は16日、奄美市名瀬の里公民館で25年産奄美プラム出荷対策会議を開いた。今期産の共販取り扱い目標は、前期実績比9トン減の1・3トンに設定。18年産以降では最少で、販売金額は同664万1千円減の91万円と、100万円を割り込む見込みだ。
大和村の共販出荷見送りについて、JAあまみ大島事業本部園芸課の國塚秀三郎課長は「出荷申し込みが少ないため、宅配による小売販売は中止する。集まった量に応じて対応するしかない」と肩を落とす。
里集落で30年以上スモモを栽培する80代男性は「大和村の出荷がなく、共販量が大幅に減ることで、今後スモモの共販がなくならないか心配」と話した。
例年、大和村で実施していた奄美プラム出発式は開催しない方針。同村は20日午前10時から、同村の湯湾釜選果場で目ぞろえ会を開き、翌21日から選果を予定している。