正規品証明にIT活用へ 近く実証実験行う考え 本場奄美大島紬

2022年04月23日

社会・経済 

大島紬に取り付けたタグの情報(正規品証書)をスマートフォンの専用アプリケーションで読み取る様子のイメージ=22日、奄美市名瀬の市産業支援センター

本場奄美大島紬の模倣品対策にIT(情報技術)を活用しようと、IT企業シーエルエムラボ(本社・東京都、橋口雅裕代表)が22日、奄美市名瀬の市産業支援センターで説明会を開いた。大島紬の生産や流通、販売などに関わる官民関係者が参加し、橋口代表らが利用予定のシステムを紹介。スマートフォンなどで正規品か否かを確認でき、流通や在庫の管理を簡略化することも可能だという。本場奄美大島紬協同組合などは、近く実証実験を行う方向で検討している。

 

シーエルエムラボは、各種システム開発やコンサルティング、企画・運営などを手掛けるIT企業。2年前から奄美市笠利町の「市ICTプラザかさり」に活動拠点を置き、地域産業支援の一環で今回のシステム導入を推進している。

 

利用予定のシステムは、IT企業PwCコンサルティング(本社・東京都、大竹伸明代表)の「デジタルトレーサビリティサービス」。正規品の証を組み込んだタグ(目印)を商品に取り付け、スマートフォンのアプリケーションや専用機器で情報を読み取る仕組み。

 

このタグは目に見える「QRコード」などと異なり、細かい粒子に情報を組み込んでいる。現行の本場奄美大島紬の正規品証書は印刷物であり、これまで証書偽造が疑われる事例も確認されているが、このタグは印刷による複製(偽造)のリスクがない。

 

さらにタグを読み取った日時や場所を記録する機能があり、「どこに、どの商品が、どのくらいあるのか」という流通・在庫状況の確認も可能。説明会では実際に専用機器を使い、タグの情報を読み取るデモンストレーションもあった。

説明会で橋口代表は「海外への販路拡大に正規品の証明は欠かせない。システム利用は大島紬のブランド力向上につながる」とPR。参加した関係者からは「導入コストや業務負担が重くならないか」「すでに出回っている正規品も多く、タグ付き、タグなしが混在するのではないか」など懸念の声も上がった。

 

本場奄美大島紬協同組合の福長敏文事務局長は「後継育成や賃金上昇といった難題を抱え、低迷する紬業界の転機となれば。まずは関係機関で協議、検討した上で実証実験を行い、課題を洗い出しつつ正式導入の可能性を探りたい」と前向きな姿勢を示した。