大島高野球部の前監督 渡邉恵尋(わたなべ よしちか)氏インタビュー 大島は21世紀枠の理想形 平常通りのプレー鍵に

2022年02月20日

スポーツ

 ―大島高が8年ぶりに選抜大会出場を決めた時の気持ちは。

「21世紀枠は力がありながら甲子園に出場できない学校にチャンスを与えることが趣旨。大舞台を経験した後に力を付け、今回実力で出場を勝ち取った大島高は、21世紀枠の理想形を完成させた学校。野球部の前監督でもあるので、わがことのようにうれしい」

 

―県大会、九州大会の躍進をどう見ていた。

 

「終盤に追いつき、試合をひっくり返す雰囲気を持っている。2019年夏の県大会準々決勝で神村学園に最終回で3点差を逆転された悔しい経験が今のチームにも息づき、粘り強さや勝負を捨てない気持ちが表れた戦いぶりだった」

 

―自身が8年前に率いたチームと現チームとの違いは。

 

「一番違うのはチームとしての経験値。8年前のチームは秋の九州大会に出ていなかったので、甲子園に出てくるようなチームと力関係を図る物差しが全くなかった。対戦した龍谷大平安が近畿地区大会の優勝校であることも、人に言われるまで知らなかったくらい(笑)」

 

「今回は甲子園に出場するチームと対等に戦って勝った上で選抜に出場する。九州大会決勝ではエースの大野君は投げなかったが、彼が登板してガチンコで戦えば九州で頂点取れるくらいのチーム力はあると思う。自分たちの力を把握しながら野球ができるのは大きな違いだ」

 

―8年前の選抜出場が契機となり、島に残る子どもが増えている。

 

「昔はノウハウもなく、指導者も変わるため、島から甲子園を目指すのは難しいと親も子も考えていた時期があったと思う。8年前の選抜出場をきっかけに、地域が『ここでもやれる』と自信をつけ、自分の育ったところで甲子園を目指すといういい雰囲気ができてきたのではないか」

 

―甲子園大会までの調整方法、甲子園球場での戦い方についてアドバイスを。

 

「大会前には温かい奄美から寒い関西に移動して調整する。8年前はインフルエンザにかかったり、きちんと調整できないまま本番を迎えてしまった。病気などで誰かが欠けると、どこかに負荷がかかる。コロナも流行っており、けがと体調管理には十分注意が必要だ」

 

「甲子園では足が震え、自分の体が思ったように動かない感覚が私だけでなく選手にもあった。いつもと違うということを早く自覚し、平常通りのプレーができるかが鍵。大野君の調子に結果が左右される部分が大きいと思うので、一つストライクやアウトを取るなど、試合の入りの部分を大事にしてほしい」

 

―大島高野球部に期待すること、エールを。

「自分たちのやっていることはすべて成功するぐらいの自信を持って、昨秋の県大会や九州大会のように力を存分に出して頑張ってもらいたい」

(聞き手・且慎也)

 

渡邉恵尋前監督略歴 鹿屋高時代は捕手。福岡教育大卒業。高山高を振り出しに、川辺高、武岡台高を経て、2009年に大島高へ赴任。10年から同校野球部監督を務め、14年に同校を初の選抜大会へ導いた。現在は明桜館高教頭。母親が瀬戸内町西古見出身で奄美と縁が深い。鹿児島市内で夫人と次女の3人暮らし。53歳。