80年前の戦跡を確認 ドローン調査の成果を発表 瀬戸内町
2025年05月10日
地域

調査で得られた成果について説明する瀬戸内町教委の鼎丈太郎主査(右)=9日、瀬戸内町古仁屋
瀬戸内町埋蔵文化財センターは9日、今年3月に同町加計呂麻島でドローン(無人機)を用いて行った戦跡調査の成果について、きゅら島交流館で報告した。加計呂麻島の瀬相、安脚場の2地域で最新技術を用いて実施した計測と解析の結果について説明。これまで森林や下草に覆われて視認できなかった旧日本軍の施設跡や、米軍の攻撃でできたとみられる爆撃跡の確認などさまざまな成果が示された。

計測データと空撮映像をもとに合成した海岸部の3D映像
調査は、瀬戸内町教育委員会とヤマハ発動機(本社静岡県)が協力して3月5~12日にかけて実施。ドローンに搭載した超高密度レーザー計測機を用いて、旧日本軍の「大島防備隊本部跡」(同町瀬相)、「安脚場砲台跡」(同町渡連)の2地域計約75ヘクタールで地形調査を行った。
調査では毎秒75万発のレーザーを照射して1平方メートル当たり3600~3900点、2地域で合計約33億地点の地形に関するデータを記録。得られたデータをもとに、2地域の細かな起伏を示した立体図を製作した。
立体図ではこれまで立木や下草で視認できなかった構造物を確認。資料や聞き取り調査と照合した結果、旧日本軍の兵舎、発電所、道路、砲台跡であることが確認された。
調査を担当した鼎丈太郎主査は調査結果について「詳細なデータが得られ、米軍の爆撃跡とみられる複数のくぼみなども見つかり、予想よりもさまざまな成果が得られた」と話し、「調査により得られる情報は戦跡調査だけでなく、林業や砂防などさまざまな分野で役立つ可能性がある。業務分野を超え、国や県とも連携して他地域も計測を進めたい」と展望を語った。
成果報告の会場では調査に用いたものと同型のドローンや、調査データと空撮映像を合成して製作した海岸の詳細な3D映像なども展示された。
ヤマハ発動機は森林のデジタル化と管理に貢献するサービス「RINTO」の実証実験の一環として調査に協力。同事業による戦跡調査は初の試みで、同社の瀬口栄作さんは「植物が密集している亜熱帯の照葉樹林で精細な地表データが得られるか不安もあったが、期待以上の成果が得られた。戦争の記録を伝えるという意義のある事業なので今後も協力したい」と話した。