リュウキュウアユの食性調査 奄美大島
2020年10月01日
鹿児島大学などの研究チームは30日までに、奄美大島に生息する絶滅危惧種のリュウキュウアユの食性に関する調査結果をまとめた。島内3河川で採集した個体の消化管の内容物を分析したところ、主要な栄養源となる藻類をほとんど摂取できていないことが分かった。同大水産学部の久米元准教授は「奄美大島の河川はリュウキュウアユにとって餌の少ない過酷な環境であることが明らかになった」と指摘している。11月発行の日本魚類学会の学術誌「魚類学雑誌」に論文を発表する。
研究チームは2015年7月~16年6月、奄美市住用町の川内川、住用川、役勝川で調査を行い、採集したリュウキュウアユ計48匹を解剖して消化管内の内容物を調べた。アユは川底の石などに付着した藻類を餌にしているが、3河川とも食べていた藻類は非常に少なく、「デトリタス」という生物の死骸やふんなどに由来する有機物が大部分を占めていた。
アユはデトリタスを栄養源として利用できておらず、研究チームは「現状の奄美大島の河川の餌環境は好適ではない可能性を強く示唆している」と指摘。リュウキュウアユは餌が少ないために、本土のアユに比べて体が小さく、餌をついばむ回数が多くなり、餌を求めて河口の汽水域まで回遊することがあると考察した。
奄美大島のリュウキュウアユは近年、地球温暖化による海水温の上昇や、渡り鳥のカワウの捕食によって個体数の減少が懸念されている。
久米准教授は「奄美大島の河川は山から流れ込む窒素やリンなどの栄養塩類が少ないために、アユの餌となる藻類の生育がよくない。山と川のつながりを大事にして、アユの子どもが育つ汽水域も含めて、環境を保全していくことが重要だ」と述べた。
リュウキュウアユは沖縄島にも生息していたが、急速な開発などによって1970年代に絶滅し、奄美大島の個体を利用して定着を図っている。奄美大島でも赤土の流出などで生息数が減り、環境省のレッドリストで絶滅危惧ⅠA類。鹿児島県は条例で希少種に指定して保護している。