ユネスコ報告案まとまる クロウサギ輪禍に強い懸念 世界自然遺産・徳之島地域連絡会議

2022年09月28日

世界自然遺産

徳之島でアマミノクロウサギのロードキルが多発する道路(環境省提供)

「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島」の世界自然遺産地域連絡会議の徳之島部会が27日、オンラインで開かれた。国連教育科学文化機関(ユネスコ)へ提出する課題に対する報告書案がまとまり、初めて公表された。多発するアマミノクロウサギのロードキル(交通事故死)が種の存続などに及ぼす影響について、徳之島で「より懸念される」と重要性を強調した。報告書は10月に開かれる専門家や奄美・沖縄関係12市町村長らでそれぞれ構成する会議での了承を経て、12月1日までにユネスコへ提出する。

 

昨年7月の奄美・沖縄の世界遺産登録に際して、ユネスコ世界遺産委員会はアマミノクロウサギなど絶滅危惧種のロードキルを課題の一つに挙げた。事故を減少させるため、交通管理措置の有効性を緊急に見直し、必要な場合は強化するよう要請し、報告を求めた。

 

アマミノクロウサギは奄美大島と徳之島の固有種で、国の特別天然記念物。環境省によると、徳之島では近年、ロードキルの多発傾向が続き、今年は今月27日までに19件と、過去最多だった2018年と同数に並び、さらに増加が懸念されている。

 

報告書案では、各地域の絶滅危惧種のロードキルの増加について、外来種対策などによる個体数の回復と、分布の拡大などを要因に挙げた。ロードキルが種の存続や生態系に及ぼす影響について、特に徳之島は、クロウサギの生息地が島の南北に分断されていることから「より懸念される」と指摘した。

 

今後の取り組みについては、クロウサギの道路への侵入防止柵の設置を検討することや、ドライバーへの注意喚起など、関係機関が連携して対策を強化する方針を盛り込んだ。

 

徳之島部会にはオンラインで約50人が参加した。報告書案では徳之島について、侵入防止柵の設置箇所などロードキル防止に向けた具体策が示されておらず、自然保護関係者から「具体的な取り組みを早急に進めてほしい」と要望があった。

 

地域連絡会議は、行政や地元団体など関係機関の調整や合意形成を図る目的で設置され、奄美・沖縄の4地域にそれぞれ部会を設けて遺産地域の適正な管理の在り方を検討している。10月3日に奄美大島部会がオンラインで開かれる。