市街地でケナガネズミ保護 環境省「ロードキルに注意を」 奄美市名瀬
2022年11月11日
奄美市名瀬和光町の国道沿いの駐車場で9日朝、国の天然記念物ケナガネズミがうずくまっているのが見つかり、保護された。市内の動物病院に運ばれたが、病気やけがなど詳しい状況は分かっていない。環境省奄美野生生物保護センターは「市街地近くで目撃されることが増え、ロードキル(交通事故死)も発生している」として住民に注意を呼び掛けている。
ケナガネズミは奄美大島と徳之島、沖縄島の固有種。体の大きさが20~30㌢と国内最大のネズミの仲間。尾が胴体より長く、先の半分が白いのが特徴。背中の長い剛毛が名前の由来。環境省のレッドリストで絶滅危惧ⅠB類。
9日午前8時45分ごろ、名瀬和光町の保険代理店ゆいわーく奄美支店の従業員用駐車場で、出勤した政勝利さん(57)がじっとしているケナガネズミを発見した。政さんは「マングースかもしれないと思い、車を降りながらスマホで撮影した。希少な動物を見るのは初めて」と驚いた様子。
駆け付けた奄美市世界自然遺産課の職員が保護し、ゆいの島どうぶつ病院(奄美市名瀬)へ運んだ。ケナガネズミに目立った外傷はないが、興奮していたため診療できていない。診察後に治療を行うか、森へ返すかなど対応を決める。
ケナガネズミが保護されたのは、和光トンネルから北へ約400㍍進んだ山裾で、国道58号に面した場所。政さんは「逃げようとして国道に出ないか、危ないと思った」と話す。
奄美野生生物保護センターによると、奄美大島ではケナガネズミのロードキルが今年9月末までに12件発生し、昨年1年間の10件をすでに上回った。奄美市名瀬の朝戸トンネル入り口付近や、小宿と知名瀬間の県道など、市街地周辺でも確認されている。
同センターの阿部愼太郎所長は「人の生活圏に近いところにもケナガネズミはすんでいる。普段は樹上で暮らしているが、移動するため道路を横断することがある。いつどこに現れてもおかしくない」と事故防止へ注意喚起した。