鹿大が宇検村で測量調査 高潮などの警報・注意報基準を検証
2022年02月21日
地域
鹿児島大学などが進めている「奄美大島宇検村における台風・高潮対応での個別避難計画の策定」に関連し、同大学総合教育機構共通教育センターの岩船昌起教授(53)は17~19日、同村の7集落200地点以上で、標高(海抜)の測量調査を実施した。正確な地盤高の算出により、高潮警報・注意報の基準値見直しの必要性が洗い出されたほか、浸水被害時の潮位の値が集落によって異なることも判明した。
取り組みは、高潮や津波災害の恐れが生じた際、奄美大島など山地や丘陵からなる「高島(こうとう)」には避難ができる高台が乏しいことから、市町村の標高が低い場所での全住民個々の避難計画の立案が目的。宇検村の居住域の大半は、険しい山に囲まれた沖積平野(河川の堆積作用で形成された平地)上にあり、標高5㍍以下。「高島」の課題を色濃く示しており、岩船教授らの研究チームは2020年度から、同村の避難計画作成に着手した。
標高の測量は、奄美大島で気象庁が発表する高潮警報・注意報の基準値より低い潮位で防波堤の切れ目や河川をさかのぼって浸水する事例が発生していることを受け、より正確な地盤高を集落ごとに把握するのが狙い。
現在、宇検村の高潮警報の基準潮位は2・4㍍、注意報は1・5㍍であるのに対し、3日間の調査では、部連地区の部連川右岸側で1㍍、湯湾地区の総合運動公園で50㌢の地点が測定されるなど、基準値の見直しが必要となる結果となった。また、海抜標識に誤りがある箇所も見つかっている。
岩船教授は「正確な土地の高さの値は避難計画で重要な部分。どの潮位で家屋や避難経路が浸水するかが予測でき、安全に身を守るための基準となる」とする一方、正しい地盤高などの情報整理は、県内ではまだ途上にあると指摘。人口規模に関わらず、海岸では市町村レベルで地道な測量が必要と訴える。
宇検村について、岩船教授は「今後、数値を基に、村防災会議などで集落ごとの危険潮位を決めてもらうことを検討する」と述べた。測量記録は同村のほか、県や大島支庁にも報告され、今後は瀬戸内町でも調査が行われる予定。