「境界上の島」テーマに 日本島嶼学会が開幕 DNAや地層から成り立ち探る 沖永良部島

2022年10月23日

地域

全国と地元の研究者が公園や研究発表などを行った日本島嶼学会沖永良部島大会=22日、知名町フローラル館

【沖永良部総局】日本島嶼(とうしょ)学会(可知直毅会長)の2022年次沖永良部島大会が22日、知名町フローラル館で開幕した。「『境界上の島』、沖永良部島からみえてくる世界と可能性」をテーマに23日までの2日間、全国と地元の研究者らが講演や研究発表を行い、島嶼の可能性や課題について多角的に考える。

 

同学会は1998年に設立され、全国の離島を中心に毎年大会を開いている。奄美群島では2004年の奄美大島、11年の徳之島に続き3回目。新型コロナウイルス感染症の影響で現地開催は3年ぶりとなった。

 

初日は一般公開シンポジウム「沖永良部島の成り立ち~人と島~」があり、高宮広土さん(鹿児島大学)が基調講演、羽田麻美さん(琉球大学)、井村隆介さん(鹿児島大学)がそれぞれ関連講演を行った。

 

高宮さんは奄美と沖縄の遺跡で見つかった遺物やDNAデータなどを基に、▽8~12世紀に狩猟採集から農耕への転換が見られる▽DNAや骨格で分類すると縄文人とアイヌ民族は近いが、奄美・沖縄人は弥生人に近い│などと解説。

 

「縄文時代、鎌倉~室町時代に奄美・沖縄に人の流入があり、これが現在の沖永良部人の起源ではないか」と述べた。

 

羽田さんは、隆起サンゴ礁の島であり、石灰岩が浸食してできるカルスト地形が広がる沖永良部島で、「ドリーネ」と呼ばれるくぼ地が多く存在することに着目。「島の段丘ごとにドリーネの密度や形状の違いを比較することで、ドリーネの発達過程が明らかになるかもしれない」と語った。

 

井村さんは「琉球弧と沖永良部島の成立」と題し、地質や地層の年代から琉球列島の成り立ちを分析。旧石器時代の海水面や気温が現代よりも低かったことを踏まえ、「どんな研究も今見えているものだけでなく、当時の自然史を考慮して考えていく必要がある」と指摘した。

 

午後からは2会場に分かれて会員による研究発表があった。最終日の23日も同館で研究発表を続開する。大会に先立ち、前日の21日には沖永良部高校での出前授業や、日本島嶼学会「島の医療を考える研究部会」主催の研究会もあった。