名瀬港と地域振興考える 再整備、観光船に期待も シンポジウムで将来像描く 奄美市
2022年12月13日
社会・経済
奄美群島内外を結ぶ海運の拠点・名瀬港(奄美市)を活(い)かした地域振興について考えるシンポジウム「海から見た奄美」(NPO法人ポートタウンあまみ主催)が11日、同市名瀬の市民交流センターであった。同港の新たな旅客ターミナル整備が計画され、新型コロナウイルスの影響で落ち込んだクルーズ船寄港再興への期待も高まる中、同港を基点に発展した名瀬市街地について、歴史や展望を語り合い意見を交わした。
シンポジウムは多角的・複合的な視点で地域づくりの将来像を描き、積極的に参画する意識を醸成することなどが目的。奄美の歴史や現状に詳しい志學館大学の原口泉教授、奄美市立奄美博物館の久伸博館長、奄美群島振興開発基金の本田勝規理事長が登壇した。
名瀬港は群島内と県本土、沖縄を結ぶ定期航路が就航し、数万㌧級のクルーズ船も国内外から寄港する。シンポジウムの冒頭、同法人の有村忠洋理事長は「奄美のクルーズ船観光市場は可能性を秘めている」と強調。続けて登壇者3人がそれぞれの視点で持論を述べた。
原口教授は「交流を基点とした地域振興は重要な課題であり、その窓口となるのが港湾都市。名瀬港は都市発展の鍵を握っている」と指摘。同港の旅客ターミナル新築について「行政任せではなく、設計段階から民間企業や市民が深く関わるべき」と訴えた。
久館長は1640年代以降の名瀬を地図や写真で振り返り、土地利用の変遷を考察。「1930年代以降は好景気を背景に護岸整備や河川改修が進み、都市景観が一変した。これまでの発展の経緯を知ることが、都市の将来像を描く一助となれば」と語った。
本田理事長は地域経済や所得循環の仕組みに関する理論を紹介した上で、奄美の地方創生に言及。「地域資源を生かした行政施策と地元側の実行力が重要。持続可能な循環型経済を持つ地域社会の実現には、産学官金が連携する体制づくりが欠かせない」とした。
シンポジウムには主催関係者を含む約20人が参加。登壇者3人の意見に対する質疑応答もあり、参加者全員で意見交換した。