被害者遺族のリアル伝える 犯罪で娘失った米村さん とくのしま被害者支援ネット
2024年05月23日
社会・経済
犯罪被害者などの支援に取り組む「とくのしま被害者支援ネットワーク会議」(会長・福宏人徳之島町教育長、事務局・徳之島署)が22日、同署で開かれた。官民の関係機関から23人が出席。今年度施行された島内3町の犯罪被害者等支援条例の概要や今後の適用に向けて情報を共有した。犯罪で娘を失った米村州弘さん=熊本市=が講話し、犯罪被害者や遺族が直面する厳しい現実を伝えた。
米村さんの次女智紗都(ちさと)さんは2009年9月に行方不明になり約2週間後に奈良県の山中で遺体が発見された。20歳だった。智紗都さんを殺害したのはインターネットを通じて知り合った男だった。
米村さんは公益社団法人くまもと被害者支援センターの自助グループ「さくらの会」の代表として全国で講演活動を行い、犯罪で家族を失った遺族の思いを伝えながら命の大切さを訴え続けている。
米村さんは警察に相談したが当初は家出として扱われたこと、遺体の発見現場に行きたいと要望しても「そんなことに捜査員を割けない」と一度は拒否されたことなど当時のつらい経験を伝えた上で、親身になって妻や娘を支えてくれた女性の警察官がいたことも紹介。被害者や遺族の心情に寄り添った対応の大切さを強調した。
米村さんの講話には同署地域課の署員らも参加。米村さんは署員に向かって「世の中には遺体に会うことすらかなわない遺族もいる。事件を捜査して犯人を捕まえるのは警察にしかできない大切なこと。使命感を持って頑張って」と思いを伝えた。
とくのしま被害者ネットワークは犯罪被害者への支援対応の効果的推進を目的に1999年設立。現在は島内3町の教育長、社会福祉協議会、各役場の担当課長、医療機関、教育機関、徳之島警察署などのメンバーで構成している。会議は昨年8月以来。
会議ではかごしま犯罪被害者支援センターの永家南州男センター長と県警本部被害者支援室の井上章一室長が県内の被害者支援の現状などについて報告。子どもの性被害への早期対応や、見舞金制度での経済的な支援の重要性を訴えた。
徳之島3町は今年3月の定例議会でそれぞれの犯罪被害者等支援条例を制定。4月1日から施行している。各町の条例には見舞金制度は含まれておらず、これまでに同条例を適用した事例はない。永家センター長は「条例をつくっただけで終わらせず生きた制度とするために改正を重ねて育てていってほしい」と期待を込めた。