「環境文化協力金」実証開始 来島者募金、保全に活用 全国初の電子決済構築へ あまみ大島観光物産連盟

2022年11月10日

社会・経済 

環境文化協力金の実証事業開始を受け、7日から奄美大島内の観光関連施設に設置されている5種類のポスター=9日、奄美市名瀬

あまみ大島観光物産連盟(有村修一会長)は1日から、世界自然遺産の奄美大島で観光客から寄せられた募金を自然保護などの取り組みに活用する「環境文化協力金」(仮称)の導入に向けた実証事業を開始している。同連盟が運営する公式サイト「のんびり奄美」のほか、7日からは島内の観光や宿泊などの施設に設置したポスターとポストカードで、電子(キャッシュレス)決済を利用した一口100円の募金呼び掛けを実施。同連盟は「島民と来島者が一体となった環境保全のモデル構築につなげたい」と意欲を示している。

 

実証事業は、観光庁の2022年度「持続可能な観光推進モデル事業」の採択を受けて実施。協力金の導入に向け募金額や徴収方法、キャッシュレス決済システムの構築を図る。事業費は約500万円。同連盟によると、自然環境保全に関する協力金の徴収方法として、キャッシュレス決済を導入する実証事業は全国初の試みという。

 

同連盟のサイト「のんびり奄美」では、「奄美大島の自然や生活環境、シマ(集落)の伝統的な文化を守り、訪れる人に50年・100年先も伝えられるよう、奄美大島を訪れた人々を中心に寄付の協力をいただく」と協力金の趣旨を説明。主な使途に「野生生物の密猟・盗掘対策」「伝統文化の維持・継承」「アマミノクロウサギの保護・増殖」などを挙げ、理解を求めている。

 

来島者への周知強化を目的に7日から順次、▽海▽山▽川▽泥染め▽八月踊り│といった奄美大島の自然、文化を象徴する写真を活用したポスター、ポストカードを、空港や港、宿泊施設など島内82カ所の観光関連施設に設置。「守る。変える。奄美の未来。」をキャッチフレーズに、「島民と一緒に奄美大島の自然環境と伝統文化を守ろう」と訴えている。

 

協力金の決済方法はQRコードを読み込み、専用アプリやクレジットカード、携帯電話のキャリア決済などを選択できる。

 

同連盟の境田清一郎事務局長(69)は「キャッシュレス徴収を実施することで人件費を抑え、集めた協力金を自然保護や文化継承の資金に充てることは持続可能な観光につながる。実証事業を多くの人に知ってもらい、来島者も島民と一緒に保護に取り組んでもらう制度を確立できれば」と話した。

 

実証事業は来年1月9日まで。結果を分析して2月に報告書をまとめ、観光庁へ提出する。23年度以降に島内5市町村での協力金条例制定を目指す方針だ。