要塞跡の価値探る 瀬戸内町で近代遺跡シンポ 活用策など提言も

2023年02月12日

芸能・文化

瀬戸内町の近代遺跡の活用法などをめぐりコメントをするパネリスト=11日、瀬戸内町古仁屋のきゅら島交流館

瀬戸内町と同町教育委員会は11日、同町古仁屋のきゅら島交流館で「瀬戸内町の近代遺跡シンポジウム」を開いた。瀬戸内町の近代遺跡「奄美大島要塞(ようさい)跡」について、調査検討委員会として携わってきた考古学や歴史学などの有識者ら5人が、各専門分野から見た遺跡の価値を解説。観光資源としての活用策などを提言した。

 

奄美大島要塞跡は大正時代、防衛を目的として建設された旧陸軍の要塞跡。「遺構が集中的に残存し、要塞全体の理解が可能なこと、国防施策と密接に関連する遺跡群であること」などが評価され、国の文化審議会は昨年12月、国の史跡に指定するよう答申した。

 

シンポジウムでは、調査に携わった町教育委員会の鼎丈太郎さんと鼎さつきさんが調査成果の概要を報告。続いて調査検討委員らが、奄美大島要塞跡の価値について発表した。

 

軍事史の視点から要塞跡の役割を指摘した防衛研究所の齋藤達志所員は、旧海軍艦隊の「前進根拠地」を経て、日米開戦後は南方作戦の「中継基地」、米軍の沖縄上陸後は特攻のための「中継地」として重要な役割を担ったと解説。

 

聖心女子大学の土田宏成教授は、要塞が築かれてきた歴史的背景を日清戦争(1894―95年)時からひもとき、「遺跡から世界の動きや歴史を考察できる」とし、修学旅行などへの活用可能性を示唆した。

 

服部正策元東京大学准教授は、遺跡がある場所が奄美の希少動物たちのすみかになっていると紹介。各遺跡から海を見渡せる環境にも触れ、景観の有効な活用策を提言した。

 

「大野城心のふるさと館」(福岡県)の赤司善彦館長は、要塞が持っていた戦略的要素を考えながら周遊する方法を提示。東海大学の木村淳准教授は、瀬戸内町での水中遺跡の発掘調査の可能性にも触れた。

 

パネルディスカッションでは今後の活用法について質問があり、赤司館長は「遺跡は国や行政のものではなく皆さんのもの。いろんな活用法のアイデアを出してほしい」と助言。観光利用のための回遊性確保を課題に示し、宇検村と連携していく必要性も述べた。

 

会場には町内外から約70人が訪れた。瀬戸内町古仁屋のガイド業富岡紀三さん(59)は「加計呂麻島を案内する機会もあり、安脚場砲台跡などに行くこともあった。町内の軍事遺跡について今後もっと勉強し、景観の良さや自然環境の魅力も併せてPRしていきたい」と語った。