喜界の農家、高質子牛生産へ努力 価格下落、飼料高騰の二重苦も

2022年10月19日

社会・経済 

畜産業界の厳しい状況を乗り切ろうと、高品質な子牛生産に取り組む豊原さん=15日、喜界町大朝戸

新型コロナウイルスの感染拡大に伴う需要減による枝肉価格の低迷やロシアのウクライナ侵攻などを背景に、今年に入り全国的に子牛競り価格の下落が続いている。9月の大島地区子牛競り市速報をみると、奄美5市場の競り価格は平均50万7939円で、1月と比べて15万円以上落ち込み、喜界市場は唯一50万円台を割り込んだ。飼料価格など資材高騰による経営へのダブルパンチに見舞われる中、喜界島の畜産農家からは「高値で取引される品質の良い牛を育てる努力も必要だ」と前向きな声も聞かれる。

 

大島地区の1月子牛競り市平均価格は66万2334円。ロシアのウクライナ侵攻以降は枝肉価格が軟調に推移し、原油や飼料の高騰が肥育農家の経営を圧迫していることが子牛相場に反映された。競り開催ごとに価格は下落し、9月は前回7月から6万2239円安と今年最大の下落幅だった。

 

喜界町大朝戸の豊原畜産は母牛約150頭、育成牛約20頭を飼育する島内有数の畜産農家。隔月で開かれる競り市には毎回20頭近い子牛を出品し、1千万円以上の販売額を得ていたが、最近は販売額が1千万円を超えなくなった。

 

代表取締役の豊原芳宏さん(66)は「経営が苦しくなった肥育農家が競り価格を抑えるのは仕方ない。新規で畜産を始め、牛舎建設や素牛、機械の導入などで借金を抱えた農家はかなり経営が厳しいのではないか」と予測する。

 

豊原畜産では、肥料・飼料の高騰対策にも対応して生産コストのカットに取り組んでいる。家畜排せつ物(牛ふん)を堆肥化して粗飼料生産の肥料などに活用。今後は粗飼料の自給率向上に向け、冬草の導入などによる収穫回数増を目指すという。

 

豊原さんは「子牛価格は過去にも30万円前後の厳しい時代があった。下落が続いている現在でもいい牛は高値で取引されている。いつかは価格が上がるという希望を持ちながら、肥育農家から評価される子牛を育てる努力が求められている」と話した。